パイプオルガン

曲紹介

Johann Sebastian Bach (1685-1750)前奏曲とフーガ ホ短調 BWV533

J.S.バッハは18歳の時に1703年にアルンシュタットにある教会のオルガニストの職を得ました。その在職中の1705年10月に4週間の休暇を取ったのですが、これには面白い逸話が残されています。休暇を取って何をしたのかと言われると、約400km離れたリューベックまで徒歩で向かってブクステフーデ Dieterich Buxtehude (1637-1707)のオルガン演奏・作曲を学ぶためでした。ブクステフーデは当時からAbendmusik(夕べの音楽)を開催していたので有名でした。J.S.バッハはブクステフーデから好感を買い、娘マリア・マルグレータとの結婚を条件に聖母マリア教会のオルガニストの後継者となることを持ち掛けましたが、断ったそうです。それはともかく、本来は4週間の休暇のところ、無断で4ヶ月もブクステフーデ のもとにいて、当然ながら教会から叱責を受けたとのことです。さらに、ブクステフーデ の影響を受けた「耳慣れない音楽」「前衛的な音楽」を演奏したことに対しても教会から顰蹙を買ったそうです。
この曲はまさにちょうどその頃に作曲されたもので、ブクステフーデの影響をもろに受けた曲です。冒頭の16分音符の早いパッセージ、即興性の高さ、突然の音の中断……高い自由度ゆえの奇妙さは当時の善良な聴衆を当惑させたのではないのでしょうか。この曲はあるいは、若気の盛りといってもいいのでしょう。この曲は俗に”Cathedral”(大聖堂)と言われますが、その名にも表れているように、エネルギッシュな曲です。メンデルスゾーン Felix Mendelssohn(1809-1847)がこの曲を好んだと言われます。

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