Johann Sebastian Bach (1685-1750)幻想曲とフーガ ハ短調 BWV537
J.S.バッハは1708年から1717年ごろにかけてヴァイマルで宮廷オルガニストを務めていました。このヴァイマル時代に得た最大のものは「イタリア様式」です。一般的なバッハ伝によれば1713年にヨハン・エルンスト公がオランダから帰った時に、J.S.バッハはヴィヴァルディ Antonio Vivaldi(1678-1741)などの多くのイタリアの作曲家の曲に触れ、協奏曲を鍵盤独奏曲に編曲したと言われます(俗にいう「イタリア体験」)。この曲は、そのヴァイマル時代後期に成立したと言われ、音楽学者ベッセラー Heinrich Besseler(1900-1969)のいう「歌唱的ポリフォニー」によってイタリア風の歌が歌われています。幻想曲は全体的にもの哀しげな印象を与えます。フーガは一転してはっきり始まり、中間部で穏やかに半音階的に上昇するものの、それもトリルで打ち切られ、最後はまた華やかに終わるのが魅力です。実はこの曲はエルガー Edward Elgar(1857-1934)によってオーケストラ版に編曲されており、そちらもまた面白みがあります。