アルヴォ・ペルト 「トリヴィアム」 Arvo Pärt "Trivium"
アルヴォ・ペルトはエストニアの作曲家です。初期はショスタコーヴィッチやプロコフィエフなどに傾倒していたようですが、「西洋音楽の根元(ルーツ)への回帰」のため古楽・グレゴリオ聖歌などの多声音楽の勃興・宗教曲に関係した音楽性へと変化しました。特徴としては和声です(「ティンティナブリ(鈴声/鐘)の様式」)。この様式では調性を抽象化・再定義かつ精錬した形で、三和音を小さな鐘のように鳴らしています。また、単純なリズム・一定のテンポであり、ミニマリズムとも称されます。この様式では厳密に音が構成されており、その詳細はP. Hillier, "Arvo Pärt (Oxford Studies of Composers)" Oxford University Press, 1997で参照できます(仮に私の演奏でその厳密性が確認できなかった場合、演奏において音を外していたりリズムがズレたりしている箇所があるからなのでこれを機に他の方の演奏を聴いてみると良いかと思います)。
1976年に作曲したいわれるこの曲でも上に記述した特徴が伺えます。トリヴィアムというのは, ラテン語で三叉路(Triは3, viaは道)という意味で, トリビアの単数形なので些末なことという意味もあるようですが残念ながらあまり詳しい表題の意味はわかりませんでした(岐路という副題も確認できました)。三叉路と関連するかどうかはともかく(そして特に些細なことではないですが)、この曲は三部構成です。第一部が穏やかな和音の連続であるのに対し、第二部は不協和音の混じった和音によって一部と同じテーマを奏でます。第一部、二部では終始同じ重低音が響いていますが、第三部ではまた穏やかな雰囲気に戻るうえ足鍵盤も複数の音を奏でます。以上の三部構成によりこの曲は厳荘的、神秘的、はたまたどこか祈りのイメージを醸し出します。駒場のオルガン(ドイツSchuke社のオルガン)はバッハをはじめとするドイツバロック音楽を得意とし、残響の良さを引き出している音楽や使用するストップの種類を多く用意する必要のある音楽は苦手とするのですが今回折角なので挑戦してみました。